マトリックス

マトリックス と聞けば、恐らく100人中98人はキアヌ・リーブス主演の映画を連想すると思うが、
残り2人のうち1人は、かつてオーバーハイム社が生産していたシンセサイザーを、
そしてもう1人は、業務用コンソールに装備されたアウトプットセクションのことを連想すると思う。
(注:あくまで 「思う」 だけの話で統計的な裏付けはまったくありませぬ。)

オーバーハイム MATRIX-12
イメージ 1


ヤマハPM1800に装備されたマトリックス
イメージ 2


ヤマハM3000に装備されたマトリックス
イメージ 3

イメージ 4


さて、この業務用ミキサー・・・つーかコンソールに装備された マトリックス とは何ぞや?

マチュアPA屋を自称しているオイラである故、正直なところ、
今まで実際に大型業務用コンソールを使った経験は数えるほどだし、
ましてやマトリックスを駆使したPAシステムを構築した現場など恐らく20回もない。
・・・ので、あまり知ったかぶりして書くとボロが出ると言うリスクに震えながら、
本日はこの マトリックス についてブログってみよーかと思いまする。

アナログミキサーの場合、この 「マトリックス」 が装備されている機種はまず間違いなく 「業務用」 であり、
入力チャンネル数は最低で16ch、ほとんどの場合は48chで活用されると推察される。
オイラの記憶が正しければ、低価格の民生用ミキサーでマトリックスが装備された機種は、
ヤマハのGAシリーズ程度しか思い出せない。

マトリックスとは、簡単に説明すれば 「グループバスの後段に装備されたサブグループ」 のようなもの。

ヤマハM3000のマニュアルより抜粋 (※M1~16はGRP1~16と同義語です)
イメージ 5


たとえば、ホールで行われるライブのPAを行い、メインスピーカーとFBスピーカーを鳴らし、
さらにホールに常設されたロビーの天井スピーカーにもその音を送り、
加えてそのライブ映像を収録しているケーブルテレビ用にもライブ音声を送る、
と言った現場がある場合、どのようなアウトプットを組んだらよいだろうか?

まず、ミキサーのインプットを次のようなグループにルーティングしてみる。
1~16chの楽器インプットをグループバス1~2にまとめる。
17~24chのボーカル・コーラス系インプットをグループバス3~4にまとめる。
25~26chの会場の拍手等を収録するためのアンビエンス用マイクをグループバス5~6にまとめる。
27~32chのBGMや影アナ等「その他」のインプットをグループバス7~8にまとめる。

そしてグループバスから次のようにメインフェーダー(=つまりメインスピーカーへの送り)をルーティングする。
グループバス1~2からメインフェーダーへの送りを 「ON」 にして 「8」 のレベルに上げる。
グループバス3~4からメインフェーダーへの送りを 「ON」 にして 「10」 のレベルに上げる。
グループバス5~6からメインフェーダーへの送りを 「OFF」 にして 「10」 のレベルに上げる。
グループバス7~8からメインフェーダーへの送りを 「ON」 にして 「10」 のレベルに上げる。

するとメインフェーダー (メインスピーカー) からは、
楽器群が8、ボーカル群が10、その他群が10のバランスで出力される。
なぜ楽器群を 「8」 にするのかと言えば、観客は楽器アンプから出力されるダイレクト音と、
PAスピーカーから出力される音の両方を聴くことになるので、
PAスピーカー側のレベルを少し下げて出力する、と言うカラクリ。

では、ホール常設のロビー天井スピーカーにはどうやって送るのか?
そこでマトリックスの出番となる。
天井スピーカーにいる来場者にはホール内の観客とは違い、楽器アンプのダイレクト音が聴こえないので、
メインミックスよりも楽器群のレベルを上げてバランスを取る必要があり、
なおかつ観客席の様子を伝えるためにアンビエンスマイク収録音も付け加えなければならない。
そこで 「MATRIX OUT 1」 をロビースピーカー送りにルーティングする。
通常、マトリックスの操作素子としては、出力端子ごとにグループバス1~8のセンドつまみが装備されている。
なので、ロビースピーカーには、「MATRIX OUT 1」の
GRP1と2のツマミを3時、GRP3と4を2時、GRP5と6を1時、GRP7と8を2時、くらいにセットする。

上記はモノラル送りの場合だが、これをステレオ送りにしようと思ったら、
「MATRIX OUT 1」 と 「MATRIX OUT 2」 をL/Rに見立て、
前述の奇数GRPのツマミを 「MATRIX OUT 1」 に、
偶数GRPのツマミを 「MATRIX OUT 2」 にルーティングすることになる。

そしてケーブルテレビ用の音声を送るために
「MATRIX OUT 3」 と 「MATRIX OUT 4」 をL/Rに見立ててルーティングする。
概要はロビースピーカー送りと同じだが、ケーブルテレビにはBGMと影アナは不要なので、
GRP7と8のツマミはゼロとする。

以上のようなセッティングをすることにより、1台のコンソールで何種類ものミックスバランスを作り、
目的に応じて最適な出力端子にルーティングすることができるワケざんす。

もっともこれは物理的に制限のあるアナログ卓ゆえの 「苦肉の策」 と言えなくもない。
もしこれが、チャンネルストリップのAUXの数が無制限のデジタルミキサーだったとしたら、
わざわざグループを組んだり、さらにマトリックスを再構築する必要はなくなると思われる。

そこで昨日ブログったベリンガーのキューボックスシステムであるが、
この場合は、いわば送り手であるデジ卓X32で16chのグループを組み、
受け手であるP16でその16chのバランスを再構築することになるので、
「遠隔操作方式のマトリックス システムと解釈できなくもない。

グルーピングの例:
GRP1+2 ドラムセット
GRP3+4 パーカッションセット
GRP5 ベース
GRP6 ギター1
GRP7 ギター2
GRP8 ギター3
GRP9+10 キーボードセット
GRP11 ボーカル1
GRP12 ボーカル2
GRP13 ボーカル3
GRP14 ボーカル4
GRP15 ボーカル5
GRP16 ボーカル6

X32で上記のようなグループを組み、それをデジタルオーディオ伝送システムでステージに返し、
演奏者 (歌手) は自分の手元にあるキューボックスで自分の演奏しやすいバランスを取る。

たとえばギタリストAは自分の音 (ギター1) とドラムとベースさえ聴こえればいい、
のであればGRP1+2+5+6のツマミを好きなレベルに上げればヨイ。

コーラス担当のボーカリストBは、全体の音を薄く、コーラス全体を少し大きく、自分の声を大きくしたい、
のであればGRP1~9を12時に、GRP11~15を1時に、GRP16 (自分の声) を2時に、
上げればヨイ、と言うことになるワケだ。


いかがでせう。 おわかりいただけましたかな?
現物を前にして、実際に周辺機器を接続して、実際に音を出してみないとよくわからないと思いますんで、
果たして文字の羅列だけでどれだけお伝えすることができたかは甚だ疑問でありますが。

もっとも 「よくわからなかったから、もう少しわかりやすく説明してくれ」 と言われても無理ですけど。

と言うワケで今日はこの辺で。
おあとがよろしいようで。
テケテンテンテン・・・




■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■

  ▼ Recording Studio GARAGE MIHO (本館) はこちら
   http://www.geocities.jp/garage_miho

  ▼ Recording Studio GARAGE MIHO's YouTubeチャンネルはこちら
   http://www.youtube.com/blueskaz

■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■-■