「はじめに文化ありき」だと?

去る3月21日、「CULTURE FIRST~はじめに文化ありき」 てなサイトが開設された


この団体、つーか組織はいったいなんなのだ?
上記サイトコンテンツの 「Culture Firstとは?」 を見てみると、
次のようなことが書かれている。

私たちは流通の拡大ばかりが優先され、作品やコンテンツなどの創作物を
単なる「もの」としか見ない我が国の昨今の風潮を改めるべく
文化の担い手として社会に喜びと潤いをもたらす役割を果たしてゆくことを
あらためて表明するとともに、次の3つの行動理念を掲げ、
最先端の知財立国として、世界に冠たる
「文化=Culture」が重要視される社会の実現を求めます。

行動理念

1.文化の振興こそが、真の知財立国の実現につながることについて、
  国民の理解を求めるとともに、その役割を担っていくことを表明します。

2.経済の発展や情報社会の拡大を目的としたどんな提案や計画も、
  文化の担い手を犠牲にして進められることのないよう、
  関係者並びに政府の理解を求めます。

3.知財先進国の経済発展を支えるのは、市場を賑わす種々の製品だけでなく、
  文化の担い手によって生み出される作品やコンテンツの豊かさと
  多様性でもあることを強調します。

・・・結局、何を主張したいんでしょーか?
オイラの国語理解力が悪いのか、何度読み返してもこの説明文だけでは、
この組織が具体的に何をどうしたいのか、オイラには理解できなかった。

ここで重要なキーワードとなるのが 知財立国」 と言う単語。
これって具体的にどーゆー意味?

早速、ヤフってみて、ようやくこの単語の意味が理解できた。

知財立国=知的財産立国」とは、小泉純一郎首相が2002年に打ち出した国家戦略の1つで、
知的財産の創出、保護と活用を、国をあげて取り組む課題として国策にした政策である。
「知財立国」は、主に世界特許に向けた取り組みや模倣品や海賊版などの対策、
大学の知的財産管理機能、営業秘密保護の強化や実質的な特許裁判所機能の創出、
法科大学院の設立による知的財産専門人材の育成などがあげられ、
2002年11月には知的財基本法を成立させた。

オイラなりの解釈では、日本の知的財産、たとえばヒトゲノム解析等のバイオテクノロジー
世界規模の画期的な発見や発明等が、論文発表前に外国の産業スパイに盗まれ
他国に先に公表されてしまい、せっかくの知的財産を失ってしまうなど非常事態に備え、
知的財産を迅速に国際特許化するなどの対策を講じる手段、立法であると認識した。

また、東南アジアをはじめとする日本の音楽CD、アニメDVD(これらも知的財産)等の不法コピーが
日本のソフトメーカーの利益を著しく阻害しているとの判断から、
これに対処する手段等も講じていく、と言うことらしい。

なるほど、日本という国家規模で知的財産を外国の驚異から防衛しよう、
という趣旨は理解できた。

それでは、もう一度 「Culture First」 の理念を読み返してみよう。
これって、よーするに、こーゆーことを言いたいんじゃねーの?

1.我々(Culture First)は日本政府が推進する地財立国政策には文化振興が重要であると考える。
2.「文化振興」は経済発展よりも情報インフラ整備よりも優先されるべきであると考える。
3.なぜならどんなにハードウェアが発達してもソフトウェアがなきゃただのハコにすぎないから。

つまりこの組織は、日本(の国民)にとってライフラインの次に大事なのは、
経済でも情報でもなく 「文化」 であると主張しているのだ!

そしてここからが本題。
「Culture First」 は以上の主張を踏まえ、次のような具体的な 「提案」 を掲げている。

今こそ「Culture First~はじめに文化ありき~」

私たちは、ヨーロッパで大きな成果を上げた「Culture First!連合」を参考として、
「Culture First~はじめに文化ありき~」をテーマとした3つの行動理念を掲げ、
広く国民の理解を得るための活動を開始することを決意しました。

デジタル技術が発達し、私的なコピーが人々にとってより身近になった今だからこそ、
そうした社会には欠かせないインフラのひとつとして、
「私的録音録画補償金制度」 をはじめとするさまざまな制度が
その役割と機能を十分に発揮すべきであるということについて、
「Culture First~はじめに文化ありき~」 の行動理念を踏まえ、
皆様に広くご理解いただけるよう活動を展開していきます。

この文面の趣旨が理解できますか?

よーするにこの組織(Culture First)は、

国民にとってとても大事な 「文化振興」 を推進するために、
私的録音録画補償金制度 を拡大する活動を行います。

と言っているワケだ。

▼「私的録音録画補償金制度」 って何? と言う方はまずこちらをご覧あそばせ。
http://www.jasrac.or.jp/info/private/

現在、消費者がCD-R、DVD-R、MDなどの記録媒体を購入すると、
知らず知らずのうちに 私的録音録画補償金 を払っているワケで、
この補償金は、当然、記録媒体製造メーカーの収入となり、
その金額を今度は 私的録音補償金管理協会 が徴収し、その後、
著作権者の団体(JASRAC)、実演奏家の団体、レコード協会に分配され、
そこからようやく本来の権利者(作家、演奏者等)に分配される、
と言う理屈になっている、表向きは。

しかしながら、現在の音楽を楽しむ風潮は従来の記録媒体を必要としない、
iPod に代表される 携帯メモリープレーヤー が主流となっており、
当然、私的録音録画補償金収入は激減している。

CD-RやDVD-Rが不要なんだから当然っちゃー当然のこと。
おかげで消費者は余計な出費をすることなく音楽を手軽に楽しむことができるようになった。

と思いきや、今度は上記の 著作権者の団体等」 が、
携帯メモリープレーヤー (記録媒体ではなくハードウェア本体) の販売代金の中に
私的録音録画補償金を付加すべきであると主張し始めた。

しかし、アップル社をはじめとするハードウェアメーカーは、
当然のごとくこの権利者団体の主張に反発。

そもそも音楽や映像は、著作権法において 「個人で楽しむ範囲」 であれば複製使用が認められている。
にも拘わらず、消費者が 「携帯メモリープレーヤーを使うこと」 に補償金を課すことは、
著作権法で認められている 「個人で楽しむ範囲」 そのものを無視しているのではないか?
とのロジックから、メーカー側はハードウェアへの補償金上乗せを拒否。

未だに両者 (著作権利者側とメーカー側) の見解は完全に分裂している。


そんな血みどろの戦いの中で作られたのがこの 「カルチャー・ファースト」 で、
よーするに、著作権管理団体 (JASRAC) 等が、
自分たちの正当性をPRするためだけの組織じゃねーの?
と言うのがオイラの見解だ。


さて、JASRAC と言えば、文部科学省天下り役人の温床として 悪名高い公益法人 である。

昨今、日本道路公団などに対しては、
公団役員の非常識な報酬や退職金支払の実態が報道されるにつれ、
国民の怒りの声が大きくなっているのにも拘わらず、
なぜか日本音楽著作権協会JASRAC) に対してはそのような声が高まっていない。

一説によると、文科省役人はテレビ局等の報道方面に強いコネを持っているため、
テレビ局、出版社はうかつに彼らの機嫌を損ねる報道ができないから、と言う都市伝説もある。
(もちろん定かではない。)


さて、本題に戻るが、この Culture First なる組織がどんなに高尚な理念を掲げようと、
結局のところ、オイラには 「自分たちの既得権・利益を確保すること」 を優先し、
その金ヅルとして、もっとも徴収しやすい手段である 私的録音録画補償金
を利用しようとしているだけにしか見えない。


なーにが、「国策である知財立国を推進するため」 だ!

日本国民にとっては、経済よりも情報インフラ整備よりも
「文化の振興=私的録音録画補償金の拡大」 が重要だと?

ほとんど 「風吹けば桶屋が儲かる」 じゃねーか!


まあいい。(良くないけど)

百歩譲って、いや、一万歩譲って、いや、一億光年歩譲って、
iPod等への私的録音録画補償金の付加を認めるとしよう。

その代わり、本当の意味での 「文化の振興」 を推進して欲しいものだ。


たとえば

多くの国民に音楽文化を振興するため、CDの販売価格を外国並み (現状の約半額) に引き下げること。

すぐれた音楽家を養成するため、コピー曲の演奏に対する著作権料の賦課を引き下げること。

国民が気軽に 「名曲」 を使えるようにするため、第3者委員会が選出した 「日本の名曲」 を
JASRAC著作権者から相応の価格で権利を買い取り、国民に無償提供すること。

団体役員は著作権者の中から選出し、文化庁OBの天下りを絶対禁止とすること。


などなど、音楽分野だけでも他に色々な 「文化を振興するための手段」 が存在するはず。


少なくとも、JASRAC関係者以外で
「文化の振興=私的録音録画補償金の拡大」 が
経済よりも情報インフラ整備よりも重要だと信じている日本国民など一人もいねーよ。

つーか、JASRAC関係者だって本心ではそんなこと思ってないんじゃねーの?


音楽を 「単なる“もの”としか見ていない」 のは、
他でもない、JASRAC、テメーら自身のことであり、
軽薄短小な駄作を名曲であるかのように乱売してきたレコード会社自身に他ならない。

その結果、自分たちの収入が減ったことに対する補填を
「補償金」 と称して国民に責任転嫁させるなど言語道断。

文部科学省はさっさと腐敗しきったJASRACを解体し、
来るべき次世代情報インフラに対応する、新しい著作権管理のロジックを確立し、
民間から選出した公正かつ多種多用な役員による新たな管理団体を創設せよ!

それこそが本当の国民のための 「文化の振興」 ではないのか。


以上、拙文ではあるが、少しでも賛同いただける方がいるようなら、
それぞれのホムペ、ブログ等でご自身の意見、改善案等を主張されることを強く望みますっ!

よすなに。