眠れる森のマリリン

本田美奈子さんが亡くなられた。

ミュージカルという分野で、それまで過小評価されていた歌唱力がようやく万人に知らしめられ、
まさに「これから」というときに志半ばで人生を終わらねばならないとは、
しかも享年38歳…、なんとも言えず沈痛な気持ちになってしまう。

果たして、自分の身に同様の運命が降りかかってきたら、
自分は後悔のない人生だったといえるのか?

言い古された言葉だが、今この時を大切に生きねばならない、
というのは、恐らく自分がそういう立場にならないと実感しないのであろう…。
うーん、相変わらず先達の教訓を生かしきれないダメ人間なオレ。

ところでオレは本田美奈子という歌手にあまり思い入れがあるワケではないが、
昔、アイドルだった頃は、
普段はきゃっぴー(死語)な喋り口調なのに、
歌いだすと、まるで正反対のダイナミックな歌唱を披露していたのが印象深い。

スマッシュヒットの「Temptation(誘惑)」「1986年のマリリン」等は、
せっかくの筒美・松本コンビ作品であるにもかかわらず、
その豪快な歌いっぷりがかえって曲の持ち味を殺してしまったような気がするのはオレだけか…。
特にブレス箇所の派手な息使いが好きになれなかった記憶がある。

その後、ミュージカル分野に進出し、たまにテレビ出演した際に最近の歌を聞くと、
昔のような派手さが消え、
ナチュラルながら迫力のある声量、実に情感たっぷりの歌唱がひしひしと伝わり、
一転して好感を持つようになった。

もし、このままミュージカルを続けていたら、第一人者となったであろうことは想像に難くなく、
そうすれば、歌謡界に逆殴りこみ(?)の形で素晴らしい新曲も発表していたのではないか?

恐らく80年代アイドルの中で、ずっと継続して歌を中心に活動しているのは彼女くらいなので、
そういった意味では80年代にオンガク活動を行っていたオレたち世代にとってもショッキングな「事件」である。

眠れる森のマリリンに合掌。