チケットが売れないっ！（その２） - だからＰＡ屋なんですってば Archive

昨日ブログでＫＲＥＶＡのチケットが売れていないネタを書いたが、
一方では、この不況下であっても、チケット即日完売という興行も少なくない。

オイラ的に馴染みのあるプロミュージシャンというと山下達郎師匠が思い浮かぶが、
師匠のチケットが売れ残ったというウワサを聞いたことがない。
その理由は、「音楽的実力がある」、「滅多にライブツアーを行わない」という理由の他に、
「一切の映像メディアを非公開にしている」という点が挙げられると思う。

つまり、「動く山下達郎」を見たいと思ったら、実際にライブ会場に行くしか手段がない、
という事実を徹底的に貫いていること。
現在のネット社会、情報共有が全盛の世の中で、山下達郎ほどのビッグネームの動画が、
「一切公開されていない」というのは恐るべきことではあるまいか？

ライブＤＶＤなど、そもそもリリースされていないし、
ファンクラブ限定ミーティングで上映されたオフィシャルなライブ映像が存在するものの、
ユーチューブにそれがアップされた途端に削除されるという徹底した管理体制が敷かれている。

つーか、山下達郎クラスでライブＤＶＤをリリースしていないミュージシャンなんているのか？
さらに言えば、テレビに出ない、本を出さない、他のミュージシャンとコラボしない、等々、
ここまで「非公開」な活動をしているにもかかわらず、人気が衰えないのは何故か？

そのヒントが、つい先日郵送された山下達郎ファンクラブ会報に書いてありました。

「小杉さん（山下達郎をＲＣＡにスカウトしたお方）に言われたのは、
僕（山下達郎）のようなミュージシャンは１位を取っちゃあダメ、ということ。
常に２位、３位にいることが長続きする秘訣だって。」

うーぬ、これってゴイスなサジェストではないだろーか？

プロのミュージシャンというか、タレントは、
自分自身が経営に携わっている方と携わっていない方がいると想像しますが、
後者に関しては、いわば所属する音楽事務所にとって「使い捨て商品」に過ぎないワケで、
人気がピークのときに売り切ってしまい、人気が落ちたらまた新しいタレントを探す、を繰り返すと思います。
あくまで利益を得るのは音楽事務所で、「事務所の人間を食わせる」という点において、
その理論は間違っているとは思いませぬ。

一方、山下達郎のように「自分自身が経営に携わっている方」は、
恒常的に自分の音楽を売り続けないと自分の音楽事務所の人間を食わせることができないので、
くれぐれも「一発屋」に終わらないように、長期的に売れ続けるように、戦略を立てていると思います。

だからこそ、一度でも山下達郎の音楽を気に入って方（ファン）を逃がさないように、
一回一回のライブに全力を注ぎ、「次のライブも絶対に見たい！」と思わせるクオリティに仕上げていると感じます。

ただ、山下達郎がライブＤＶＤを出さない理由は、決して現在のような「希少価値」を見込んでいたワケではなく、
ただ単に「僕の音楽に映像は必要ない！」という、昔からの一貫した信念に過ぎないと思いますが。

昨日、めざましテレビを見ていたら、今年、還暦を迎えたさだまさしが、
さいたまスーパーアリーナにおけるバースデーライブのチケットを売り出したところ、即日完売だったとのこと。
果たして、さだまさしのライブにどれほどの経費がかかっているかはわかりませぬが、
ミュージシャン・音響・照明・舞台スタッフ等の人件費、実際の設営経費等は、
他のミュージシャンに比べて決して割高ではないと想像します。
入場料収入からそれらを差し引いた利益、というか「利益率」はかなり「高い」のではないでしょうか？
また、地方のプロモーターも、これまでの経験則、統計データから、
「身の丈にあった会場を選択する」柔軟性を持ち合わせているものと推察します。

「オレはスタジアムを満員にできるんだぜ！」というような見栄を張ることなく、
冷静に自分の人気＝需要を判断し、その需要にあった供給（会場手配）を図るなど、
確実に利益を出す「商売」を行うことこそが、今後はより一層重要になると感じますな。

もちろんそのためにもっとも重要なことは、タレントが「ホンモノ」であるということ。
ゲーノーカイには、素人に毛が生えたようなタレントも少なくありませんが、
そーゆー方が生き残るのは容易ではなく、やはり長く生き残っている方の多くは、
一朝一夕に他人に真似のできないような「芸」を有していると思います。

オイラなんざ２０代の頃は、マヂでヘタクソの極みでありまして、
とても表舞台に立てるような「芸」も「演奏技術」も持ち合わせておりませなんだ。
しかし、それでもアマチュアミュージックに関わっていたいという気持ちから、
裏方業（ＰＡ手伝い）に回った経緯がありますんで、正直に言いますと心の片隅で
「オイラよりヘタクソなアマチュアのライブは・・・見たくないなあ」
と思っております。