「情報」の価値

その昔・・・2001年だったか、オイラが愛読する サウンド&レコーディングマガジン」 に絡む
ちょっとした事件と言うか騒動があった。

当時、サンレコ誌上において 「匠 (たくみ) の技」 (だったかな?) と言う、
業界著名人がカスタマイズを施した逸品を誌上販売するコーナーがあり、
オイラの仲間内でもそれなりに話題になっていた。

たとえば、
A社のマルチエフェクターにプロのギタリストが実際に使用しているプログラムを追加したモノだとか、
B社のニアフィールドモニターにトップエンジニアがチューニングを施したヤツとか。

当然、ノーマルな製品よりも割高になるが、
それでもバイヤーは世界に10個程度しかない 「逸品」 を求めて購入しており、
それなりの人気コーナーだったように思う。

そしてあるとき、問題の 「逸品」 が登場した。

それは、レコーディングスタジオに使われるモニタースピーカー用の 「スピーカー台」
しかしそれは何らかの加工を施した「製品」ではなく、ただの 「石」
正確に言うと、歩道等に使われている 「インターロッキングブロック」
それに色を塗り、2個 (4個?) 一組のステレオペアにして 「匠仕様」 として販売すると言うモノ。

オイラのおぼろげな記憶では、
「この石をスピーカー台に使うことにより、あなたのモニター環境は劇的に向上する。
 実際に著名なマスタリングエンジニアにテストいただき、お墨付きをもらった。」
・・・ような出品者=匠の言葉が掲載されていたと思う。

問題はこの売価だ。
ぬわんと4個一組で、1セット1万円!

DIYショップに行けば、1個当たり約100円で売っている 「石」 が、
業界で有名なマスタリングエンジニアの鶴の一声で1万円に跳ね上がった!

この 出品者 = 匠オノセイゲン と言う名の通ったマスタリングエンジニアのお方で、
サンレコ誌上においては、レコーディングエンジニアの資質、養成等に関するセミナーやコラムで、
かなり辛口な記事・コメントを述べていたことが印象深い。
特にオイラ的にインパクト大だった一言がこれ。

「ウチのスタジオの見習いには丁稚奉公させている。当然ギャラなんか払っていない。」

うーん、レコーディングスタジオへの就職ってのはキビシイもんなんだな~と思った記憶がある。


そんな星一徹ばりにキビシイ、鬼のようなエンジニアが出品した逸品だけに
正直言ってオイラも騙されかけていた。
「はー、この石をスピーカーの下に敷くだけで劇的に音が向上するのか。
 でも1万円も出せないなー。興味はあるけどとても買えねーなー。」
と、早々と購入を見送っていた。

そんな矢先、ネット上ではこの 「石」 について、喧々諤々の意見が集中していた。
「これ、ハッキリ言って詐欺だろう。」
「原価100円の石を自分の名前を利用して1万円で売るなんてひどすぎる。」
オノセイゲンのホムペの掲示板に、この石を使ったら音が良くなったと言う称賛の投稿があったが、
 どうも自分自身が他人の名前を語って投稿している痕跡がある。」
「オーディオマニアは騙せてもオレたち (レコーディング関係者) は騙せない。」
・・・と言った非難ゴーゴーの意見ばかりだった。

今回、本記事を書くに当たってダメモトで検索してみたところ、
ぬわんと閉鎖されたはずのこの掲示板スレッドが残っていたので驚いた!


この凄まじいばかりのご意見の中で、オイラが最も同意したのがこの一言。

No.1751

サンレコって今時、その内容に関してはみんな飽き飽きしてて
カタログ代わりにぐらいしか見てないと思うんだけど、
それでも一応オーディオ雑誌とは違うわけで、あのやり方はいかんよ。

たかだかブロックで「道を歩いていても素材をさがしているんです」とか言ってもやはりブロックのレベルでしょ。

もし、本当にすごーく効果の高いものだったとしても、
それはブロックというコストパフォーマンスの高いものだから価値があると思うわけで、
それをあたかも自分が発見したんだから暴利を取っても問題ないという考え方はおかしい。
誰にも真似できないものだったら暴利を取ってもしょうがないんだけどさ。

それにその程度の発見だったら音楽系掲示板あたりで「こんなブロックが効果あるよ」という
レベルの話だと思うわけでその程度の情報はみんなで共有しましょうっていうレベルだと思んだけどね。

セイゲン氏のような商売できるんだったら某赤川氏の掲示板なんかでコンデンサの話も出てるけど
「いやぁ、このコンデンサがスピーカーにいいというのは私が発見したんですよ」と言って
デタラメな価格で売りに出すのとかわんないでしょ。

でも、赤川新一さんはそんな事、共有レベルの話だと思って惜しみなく教えてくれてるしね。

もし 「100円の投資で音が良くなる」 ことを発見したとして、
その情報を自分一人で独占して少しでも利益を得よう、と考えるのか、
この情報を多くの人に知らせてあげて喜んでもらおう、と考えるのか、
この辺は人それぞれの資質、商売に対する考え方に依る部分が多いので一概にはなんとも言えないが、
少なくとも音楽を職業としていないオイラは、自身の主義主張に基づき、絶対に後者を選ぶ。

もしそれ (自分が発見した情報を他人により情報公公開されたこと) に対して、
「商売の邪魔をしやがって」 と思うのなら、なんと貧しい心の持ち主だろう。

本当の 商売人=プロ であることに誇りを持っているのなら、
「誰にでもできること」 ではなく 「自分以外の誰にもできないこと」 を売りにすべきではないか?


この 「情報」 と言う無形の財産に対する価値観の違いは、
今までもこれからも千差万別であり、今後も決して埋まることはないと思うが、
それだけに、各人が 「情報に対する価値観」 を熟慮することが大切なような気がする。

資本社会世界において、オノセイゲンのような商売は決して全否定されるものでないとは認識しているが・・・
ただ前述のとおり、音楽を趣味とする、いち民間人としては絶対に同意できることではありませんがね。




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