試合である前に勝負であり、勝負である前に武道である

去る10月26日、横浜アリーナで開催された K-1 MAX でのレフェリングに対し、
テレビ視聴者からの苦情電話等に応える形で、角田信朗 氏に3カ月のレフェリー停止処分が下されたそうな。


▼ニッカンスポーツサイトより無断転載
角田3カ月レフェリー停止

K-1の角田信朗レフェリー (48) が、3カ月のレフェリー業務停止処分を受けた。
13日、大成敦ルールディレクター (42) が都内のFEG事務所で会見し、発表した。

角田氏は10月26日の 「K-1 WORLD MAX」 (横浜アリーナ) での
武田幸三アルバート・クラウス (オランダ) 戦で、
武田がダメージを負いながら試合を続けさせた。
大成氏は、角田氏の判断が
「視聴者、観客の判断したダメージとの間に大きな隔たりがあり、混乱をきたした」
と説明。
3カ月の業務停止はレフェリーへの処分としてはK-1史上最長という。

武田-クラウス戦について、FEGには 「もっと早く試合を止めるべき」 などの声が多数寄せられた。
大会直後の審判団のミーティングでも、クラウスの攻撃で武田がよろけた際、
スリップとした判断が問題視され 「ダウンとすべきだった」 とする意見も出た。
角田氏は 「1歩離れ、客観的に試合を見たい」 と、自ら処分を下したという。

角田氏は07、08年の 「K-1 WORLD GP」 決勝など大舞台を裁いた。
今年は、12月5日の 「K-1 WORLD GP」 や
みそかの 「Dynamite!!」 などのリングに立つことはなくなった。

[2009年11月14日9時19分 紙面から]
:

オイラもこの試合 (武田幸三引退試合) はテレビで観戦し、
その壮絶なる散り際と、「生きて家族のもとに帰ることができます」 の一言には、思わず涙が出てしまった。

と同時に、この試合を 武田幸三と言う、稀代のサムライの最後の戦い」 と認識し、
「特別扱い」 的なレフェリングを強行した角田レフェリーにも賛辞を送っていた。

多くの視聴者が指摘しているとおり、この試合のレフェリングはたしかにツッコミどころが満載だった。
ハッキリ言って、終盤の攻防は武田の醜態を晒すだけの時間とも言え、
一歩間違えば残酷ショーの一歩手前であったことも間違いない。
当然、レフェリーはもっと早くに試合をストップして然るべきだった。

だがしかし、この試合を最後にリングを去るサムライ・武田の心情を考えたとき、
「もっとやれたのに・・・」 との気持ちのまま、試合を終わらせることなどできない。
徹底的に打ちのめされ、身体も精神も 「もう限界だ」 と自分自身で納得してこそ、
心おきなくリングを去ることができる・・・と、シロウトのオイラは勝手に妄想していた。

これもオイラの勝手な妄想にすぎないが、
恐らく角田レフェリーは視聴者からのバッシングを覚悟のうえで、
すべて自分の責任として処分を受けるつもりでリングに上がったのではないだろうか?

オイラは格闘技に限らず、すべてのスポーツには武道と同じように 「道」 があると信じている。
野球道、相撲道、サッカー道、バレー道、スケート道・・・等々。

すべてのスポーツに共通することは、苦しい練習に耐えることで肉体的鍛錬を行い、
もう駄目だと思ってしまう自分自身の弱い「心」を乗り越えることで、精神修行を行うことだと思う。
そして、肉体的にも精神的にも成長し、総合的な「人間」として、
他者よりもすぐれた結果を残した者だけがプロとしての晴れ舞台に立てるのだ。

ただ、プロの場合は報酬が発生するため、厳格な判定を下す必要があることから
どうしてもルール主体となってしまうことは否めないが、
逆を言えば、厳格な判定が必要でない 「特別な試合」 においてはこの限りではない、
と言うのがオイラの持論だ。

たとえ結果的に試合に勝ったとしても、勝負には負けていた、
と言う気持ちが自分の心に芽生えてしまっていたとしたら、それは自分にとって 「負け」 であり、
逆に、試合に負けたとしても、勝負にも負けていたとしたとしても、
自分の弱い「心」には打ち克ったんだ!と納得できれば、それは自分にとって 「勝ち」 なのだ。

そのための死に場所をサムライ・武田に提供した角田レフェリーもまたサムライであったと思う。


ちょっち話は横に逸れるが、かつて HERO‘S の大会において、
桜庭和志ケスタティス・スミルノヴァス との試合中に一方的に攻め込まれ、
いつレフェリーストップになってもおかしくない場面であったが、レフェリーは試合を続行し、
結局スタミナ切れになったスミルノヴァスに桜庭が関節技で逆転勝ちした試合があった。

この試合のレフェリングに対し、スーパーバイザーの 前田日明
「選手が死んだらどうするんだ! もっと早く止めるべきだ!」
と激怒した有名な話があるが、この前田発言に対し真っ向から噛みついた男がいた。

「プロレスラーがリングで死ねたら本望だろうが!」

マニアックなプロレス専門紙として有名な 週刊ファイト の紙面でそう断言したのは、
オイラが人生の師匠と仰ぐ 「活字プロレス」 の元祖、井上義啓 ・元編集長であった。

そう断言した井上編集長は、このときすでに癌に侵されており余命いくばくもなく、
同年12月にたった一人の身内である実姉に看取られて静かに息を引き取った。

「プロレスラーがリングで死ねたら本望」 とは、
実は、人生を仕事 (プロレスマスコミ) 一筋に捧げた男が、
自分自身を 「選手」 に投影した、自分自身に対する 「覚悟の一言」 でもあったのだ。

余談だが、井上編集長は自身の病状、余命については、
実姉と信頼のおけるただ一人の部下 (フランク井上氏) にだけ知らせ、次の遺言を託したと言う。

オレが死んだら死後一週間は誰にも知らせず、葬儀がすべて終了した後に発表しろ。
ただし、葬式は不要。香典も献花もすべて断れ。

・・・飛ぶ鳥、後を濁さず、とはまさにこのこと。


井上編集長の遺言を、オイラはこう捉えている。

戦っているのは何もプロレスラーや格闘技者やスポーツ選手だけではない。
すべての社会に生活する人間が戦っている。
その戦う相手の中でももっとも手強い敵こそが 「自分自身の弱い心」 であり、
それを乗り越えることこそが 「人生」 である。
そのもっとも手強い敵に打ち克てば、「死」など恐れるに足りない。

これは、オイラが一人勝手に妄想・盲信している井上編集長の遺言の 「真意」 であり、
本当にこれが編集長の意図していた 「正解」 であるかどうかはわからない。

だが、んなこたーどーだっていい。
オイラの生きざまなど井上編集長の一億分の一にも届いていないことだけは確かなので、
少しでも近づけるよう、精進する以外にない。


とまあ、例によって横道に逸れまくってしまったが、
今回の角田氏のレフェリングも、「K-1道」 とも言うべき、
角田氏の信念に基づく 「いち武道家」 の去り際に対する精神誠意の配慮であったと信じている。
そしてそれは決して万人に理解されるものでないことも承知のうえで、あの試合に至ったと思う。

この角田氏の配慮に対し、武田幸三もまた 「弱い自分」 に打ち克ち、
最後の最後まで何度でも立ち上がり続け、決して自分からギブアップするこなく試合を終えた。
そして最後の一言。

「生きて・・・(選手生命を終えることができ) 家族の元に帰ることができます。」

果たして角田レフェリーの配慮なく、この言葉に 「重み」 を付けることができたのか?

試合である前に勝負であり、勝負である前に武道である。
そして、武道と人生とは同義語でもある。




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         2回目:18時30分~19時00分 2ブロック
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         2回目:14時30分~15時00分 1ブロック

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   日時 : 12月11日(金)19時30分~21時00分
   会場 : コーヒー&ギャラリー やまぼうし
   料金 : @500円(ワンドリンク付き)
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