プロとアマのPA料金の相場は?

先日、某掲示板でこんな書き込みを発見した。

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PA屋さんになって十数年のオッサンです。
私のまわりにも似たような事
(=PA初心者ではあるが、クライアントも了解のうえでPAサービスを提供している)
をしてる子達がいます。
特に気にする事なく、やれる範囲の事をやればよいと思います。

どなたかの書き込みでもありましたが、プロを名乗っても大した事ない輩は沢山いますから・・・

ただ、近頃オッサンはこう思ってます。
こういうセミプロまがいな人達が小遣い程度の金額で仕事を取る事が、
業界全体の価格破壊を招いてるんだな・・・と。

機材維持費、人件費を考えると、とても出来ない金額で要求する客は年々増えています。
利用する客の中には音の質より金額最優先って人多いからね。(殆どかな?)

オッサンの食いぶち減らさない程度の金額で仕事やってね。


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うー、オイラ、これとまったく同じセリフを某ベテランPA屋のオヤヂから言われたことがあります。
15年くらい前だったか、オイラが個人でPA機材を集め出して、
小規模イベント(SX200が2対向クラス)程度なら対応できる態勢を整えた頃に、
「半分アマチュアとは言え、PA屋としてクライアントから仕事を取る気があるんなら、
 業界ルールを乱す(PA料金の値崩れさせる)ようなことは慎めよ。」

と言われたことがある。

そんときゃー、ふーん、そーゆーモンかあー、と思う一方で、
個人的にPA料金の相場が、労働力、機材への投資価格に比べて 「高い」 と感じていたので、
クライアントの立場から考えると、もっと良心的な価格でもいーんじゃないのか? とも思った。

オイラが20代の頃、アマチュアバンドが自主企画ライブを開催しようと思ったら、
50~100人くらいのお客さんが収容可能なハコを借りるのに約10~20万円、
PA料金が5~10万円、
さらにチラシやチケット作成、その他にかかる諸経費が約3~5万円、
合計で最低でも18万円、下手すりゃー35万円以上、なんてのが相場だったように思う。

これぢゃー、ライブを企画したいと思っても、その資金を捻出することを考えたら、
年に1回、下手すりゃー2年に1回くらいしか実現できない、ってのが現実だった。

もっとも当時はバンドブームの真っ最中だったので、
現在のように喫茶店を貸し切ってアコースティック系のライブを行う、と言うニーズはほとんどなく、
それ相応のハコ(かなり大音響を出しても周囲から苦情が来ない場所)を探さなければならない、
と言う時代背景に違いはあるが。


そこで思ったのが、だったら自分で最小限のPA機材を揃えて、
少なくとも自分の関係するバンドくらいは自分のPAでまかなえば多少は経費削減できるだろう。
ついでに友人のバンドの手伝いもできれば喜ばれるんじゃなかろーか? と言う発想。

さらに、ちょうどその頃、PA機材の値崩れ(サウンドハウス開店)や、
エポックメイキングな新製品(デジミキ…ヤマハPro-Mix01、エレボイ…SX200等)が発売されたこともあり、
一念発起して、12月のボーナスをすべて使って29歳の頃に機材を一括購入した次第でやる。

なので、サラリーマンの副業としてPA屋を開業する、と言う意識は、
ない、と言えばウソになるが、実際のところ、積極的に門戸を開放しようとは思わなかった。
もともと音楽が好きで、アマチュアバンドのライブに関わりたくて足を突っ込み始めたPA業界なので、
それなりのギャラをもらって音楽的要素が皆無なイベントのPAを手伝うより、
小額のギャラでも、音楽的な満足度の高いライブのPAに関わりたいと思っていた。

その後、オイラは 「アマチュアPA屋」 を宣言して、そのスタンスのまま現在に至っているワケだが、
さて、ここで見直したいのが前述の 「PA屋さんになって十数年のオッサン」 のお言葉。


こういうセミプロまがいな人達が小遣い程度の金額で仕事を取る事が、
業界全体の価格破壊を招いてるんだな・・・と。
機材維持費、人件費を考えると、とても出来ない金額で要求する客は年々増えています。
利用する客の中には音の質より金額最優先って人多いからね。(殆どかな?)
オッサンの食いぶち減らさない程度の金額で仕事やってね。



ここで書かれている、セミプロまがいな人達」 と言うのが、
まさしくオイラのようなスタンスの輩(やから)であろう。

たしかにオイラがPAを請ける料金は安い。
恐らくプロの相場の半額程度だと思う。
その代わりと言うワケではないが、知人、もしくは知人からの紹介以外のオファーは請けない。
知人でも、音楽的要素の低いイベントはつまらないので、極力避ける。
よーするに、自分がPA担当して楽しくなさそうなオファーは請けない、と言う、
ワガママ至極なスタンスに徹している。

お気に召さないのであれば、じゃあプロの業者を紹介するんで、
そちらに正規料金を払ってPAを発注して下さい、と言うだけのことだ。
もっとも、知人からのオファーに対してそんな暴言は吐けないが(笑)。
ま、そーゆー 「心構え」 だ、っつーことで。


さてさて、そんなオイラのスタンスはプロのPA屋さんたちに目の敵にされているのか?
オイラに限って言えば、少なくとも面と向って 「安すぎる!」 と文句を言われたことはない。
恐らくオイラの知らないところで 「目障りなんだよなー」 とか言われていると想像はしているが、
前述のとおり直接文句を言われていないので、そんなの関係ねぇっ! と思っている。


話が収集つかなくなりそうなので 「プロとアマのPA料金の違い」 に関する論点をまとめてみよう。

A プロのPA屋の積算
   ・機材への投資、メンテナンス料、人件費、運搬費、安心料

B アマチュアのPA屋の積算
   ・機材への投資、人件費、運搬費

C プロのクライアントがPA屋に求めるクオリティ
   ・最高の音質、絶対的に失敗は許されない完璧な仕事

D アマチュアのクライアントがPA屋に求めるクオリティ
   ・そこそこの音質、多少の失敗は許される適度な仕事


ハッキリ言いましょう。
オイラのお仕事(PA)ランクは 「D」 に対する 「B」 の提供である。
とても 「C」 に対する 「A」 のサービスは提供できましぇん。


オイラに絶対的に欠けているPA屋としてのスキルは、ズバリ 「責任感」「安心感」
ゆえにプロのPA屋さんの 「相場」 の金額は要求できない。
せいぜいその半額が妥当だと思っている。

なので、PAのオファーを打診されたとき、
とてもオイラにこんなシビアなオペの責任は持てないと思ったら、
プロのPA屋さんを紹介するし、「安心料」 として金額が倍以上かかることも説明する。

「安心料」 とは、万が一トラブルがあっても、即刻シューティングできる機材とスキルを有すると言うこと。
もっと具体的に言えば、そのイベントに必要とされる機材の2倍(半分は予備)を用意して、
さらに、オペレーターも予備人材をキープする、と言うことである。

もしクライアントが、PA料金は限りなく安く、なおかつ最高の音質で、などと要望するようなら、
そんなにオイシイ話はないっ! と一刀両断するしかないっ!


ここで問題となるのが、プロのPA屋さんに 「D」 のようなオファーが舞い込んだときの対応ではなかろうか?
「そこそこの音質で構わないし、多少のミスは目をつぶるから金額を安くしてくれよー」
と言われたときにどう対処したらいいのか?

そうは言われてもプロである以上、アマチュアと同じようなシステムを提供することはプライドが許さない。
他の業者からの視線も気になるし、「そこそこの音質」 を出したら後でどんなウワサを流されるかわからない。
そうなると結果として 「A」 のサービス提供することになり、価格を下げるワケにはいかなくなる。

もしオイラがその立場だったら、たしかに迷うと思う。

そこでクライアントが 「●●さん(アマチュアPA屋)は●●●●円でやってくれたよ」
などと言おうモンなら、「あのヤロー、余計なことやりやがって(怒)」 と思うのは当然だ。


それじゃあプロのPA屋さんはどーすりゃいいのか?

ハッキリ言ってわかりません。


つーか、世の中の商売のほとんどが大企業に飲み込まれている昨今、
身近にあったはずの、個人営業の八百屋、駄菓子屋、靴屋、眼鏡屋、その他もろもろの職種はほぼ絶滅状態で、
みーんな、スーパーマーケットやらコンビニやら大型安売り店にお客さんを奪われてしまった。

恐らく、大手カラオケ企業あたりが本腰を入れて 「バカ安PAサービス業」 に乗り出してきたら、
町角のPA屋さんなど一溜まりもないであろう。


冷たいようだが、アマチュアPA屋に毛が生えた程度のプロでは生き残れないと思わざるを得ない。

マチュアと同じような仕事を請けても、確実にクライアントの要望以上のサービスを、
さりげなく提供できるような職人気質のPA屋しか生き残れないと考える。

そー言った意味では、もしオレがプロのPA屋として独立しても、ハッキリ言って将来性はない。


「PA屋さんになって十数年のオッサン」 の事情はオレなりに理解できる。
だが、セミプロまがいのエセPA屋を非難している 「今のうち」 が花であり、
将来、大企業が巨大資本をバックに 「そこそこの音質のシロウト向けPAサービス」 を開始したら、
非難する以前に生き残り方法を考えなきゃならんでしょう。

そのとき生き残れることができる個人経営のPA屋とは、ありきたりの言葉でしかないが、
確かな技術とワンランク上の機材を有している一握りのプロでしかない。

逆にオイラのようなアマチュアPA屋は 「そのまんま」 と言うか、
最初から相手にされていないと思うけどね。


まー、PA屋に限らず、個人経営は難しい時代でありやす。
他人事のような書き方で申し訳ないが、これからが本当の意味での
「プロのPA屋の正念場」 の時代を迎えると思います。


そんなワケで、マールさん、がんばってくださいっ!

(ってなオチでどーよ?)